水月・みずかべ レビュー
このコーナーは独自の見解で書いてますので、一つの参考として読んで下さい。
主にストーリー解析が中心です。物理やら天体やらで濃いのでお気をつけて。
これを読んで、もう一度本編をプレイされるとより良いと思います。
まだまだ読みが浅いので、これからもちょくちょくアップ・修正していく予定です。
このレビューで、水月のシナリオにもっと興味を持って頂ければ幸いです。
意見があれば、どんどん掲示板のほうへお寄せ下さい。
CGについて。 03/1/25
CG全体を見てみても、なかなかの出来だったように思えます。
原画は、一部崩れているものもありましたけど、かなり高い質を保てていたと思います。
原画に関しては、『NAKED BLUE』『水月・落書き』『ビジュアルファンブック』と、結構な量の原画が公開されているので、大変参考になりました。
今回のCGは特に『可愛い』のが多かったですね。那波でさえ『みずかべ』ではあれですから。
CGにならなかった原画で、私が是非CGにして欲しかったのは……
双子ちゃん水着・イルカうきわ付き
鈴蘭のフェラチオ
鈴蘭と透矢・一緒にお風呂
等です。ここに関してはあえてロリに走ってますね。
CGの塗りについては、さすがF&C。申し分なかったです。
Canvasの雰囲気を次いでか、『☆画野朗氏原画のゲームのCGは淡い手書き風』ってイメージが定着しちゃってますね。
当の☆画野朗氏は、『PUREGIRL』2000年12月号で『Canvas塗りは個人的には中途半端』とか言ってましたけど。
実際水月とCanvasの塗り方ってかなり違いますよね。
特に背景の感じとか全然違ってますからね。水月は田舎っぽくてとても良いです。
☆画野朗氏も。比べられることを意識して原画を製作していた模様ですので……
とにかく水月の満足度はCanvasを遥かに上回りました。
☆画野朗先生の進化はとても喜ばしいです。やっぱり☆画野朗先生最高ですねー。
これでトレカが出たりしたら、フルコンプしてしまうのが見えてますね。
地理観について。
涙石の起源 03/1/4
水月を語る上で、涙石は欠かせないものとなっています。
ある時は海岸に、ある時は海底に、透矢や香坂姉妹の大切な持ち物ともなっているものです。
涙石は人々の願いを具現化する媒体として機能します。
那波村だけで通じるパワーストーン。それが涙石だったわけですね。
では、いったいその涙石はどこから生まれるのでしょうか。
涙石の生み出す力は、洞窟の奥の世界・大きな木のところに由来します。
そこで結晶化した涙石は、洞窟の地底湖から地上に出、川へと流れていきます。
そして、最後は大和神社の滝に行き着くのです。
確証はありませんが、おそらくそんな感じなのでしょう。
儀式で巫女は宮代神社から大和神社へ渡ります。
その宮代神社は『雪シナリオ』で分かるように、かなりマヨイガに近いところにあります。
さらに、大和神社の滝の下には、伝承にかかわる遺跡があるわけです。
これに関しては全く伏線が張られてなかったですので、実際何だったのかは分かりませんでしたが・・・
まあ、これらからマヨイガ→宮代神社→大和神社→海底遺跡という流れがあるのかなぁと予測できます。
シナリオについて。
虚構の存在 〜雪〜 03/1/25
まず、前提としてストーリーの要約から入ります。
それでは、雪さんから。
雪は、透矢の願いを受けて誕生した存在です。
いつか、透矢の頭を撫でてくれる人が現れる、そんな願い。
それを受けて現れた、いつかの『ゆき』という名の風船ウサギ。それが雪さんです。
彼女の存在は、とても希薄です。
色素の薄い肌と、どこまでも透明な赤い目。
まさに孤高な雪ウサギを思わせるその外見。
家族以外の者とほとんど関係を持たず、透矢のためだけに存在する人間。
記憶も家族も持たず、それらの痕跡も全くない。
そんな『死にやすい存在』、それが雪でした。
そして、雪さんは山の民でした。
平地の民とは違った性質を持つ山の民。
その山の民も同様に、記録を抹消されている存在です。
天皇起源説、つまり『アマテラスオオミカミ』から人が生まれたという説のために消去されたその記録。
宮代神社の戦前の記録が消されたのがその例でした。
他にも、山の民の村の状況や、学校の防空壕での虐殺などが、この例に入るのではないかと思います。
余談ですが、『山の民』については『柳田國男』さんの著書(遠野伝説etc...)に『山人』として出ているらしいので。読んでみてはいかが。
総合して、雪さんは『山の民』であり『魔法が現実になったもの』なのです。
でも、そういえば『みずかべ』の中に存在する雪さんは、ただの透矢の幼馴染ですよね。
これは、偽者の雪さんなのかと考えてみても,それはわかりません。
どちらの雪さんも本当の雪さんで、同時に二人の雪さんが存在しているのです。
これは、つまり同時に存在する多くの雪さんの可能性のいくつかなのです。
どの雪さんが本当なのかは、この話だけでは解決できない問題なのです。
虚構の存在 〜那波〜 03/2/25
そして、雪さんと対になっている人物、那波についてですね。
対なだけあって、雪さんと似た原理が応用できます。
物語には、ふたりの那波が存在します。
いわゆる、『水月』の那波と『みずかべ』の那波です。
このふたりは、同時に存在する那波の可能性なのです。
透矢は、夢の中で同じ時を繰り返します。
そこに存在するのは、ひとつの可能性である『水月』の盲目の那波です。
事象の連続性と、夢の無限邂逅。
夢の中で何度も巡り合う透矢と那波。
それは『目覚めてから最後の日まで』という1つのプロセスを辿り、再び最初に戻ることを意味します。
それは、長い年月繰り返されてきたプロセスなのです。
前世で言う名波とナナミ。二人の出会いこそが無限邂逅の始まりだったのです。
結ばれること無く、何度も巡り合う二人。
二人が結ばれることによって、初めてそのプロセスから脱することが出来るのです。
結ばれない場合、つまり那波が死んでしまう場合、夢は再び繰り返されます。
そして結ばれた場合、初めて夢が未来へ開いていくのです。
そこに存在するのが、ひとつの可能性である『みずかべ』の那波なのです。
それは、那波の持っていた可能性のほんの一欠片にしか過ぎません。
しかし、それは同時に長いプロセスから脱したことを意味します。
その証拠に、『みずかべ』の那波は盲目ではありませんから。
夢と現実の違いは、とても些細なものです。
だって、どちらの那波もいつの間にか透矢の日常の一部となっていた存在なのですから。
不確定な可能性 03/3/19
同時に存在している、多くの可能性。
それが那波と雪に共通する事柄であり、花梨にも和泉にも誰にでも共通します。
ここで実際に応用されているのが、ヴェルナー・ハイゼンベルグの『不確定性原理』です。
原理としては、『位置と運動量は同時に確定できない』というものです。
ある意味、水月の大きな要素であるのが、この『不確定性原理』なのです。
ここから、水月の話に入る前に。簡単にこの『不確定性原理』を説明。
運動量とは、粒子の進む速さと方向を表す尺度であり、『確率波』として表せます。
位置とは、その名の通り、その粒子の空間的な位置です。
自然界では普通、この二つは相互に不確定な状態のままで存在しています。
そのほとんどが、確率によって『近似的』にのみ確定しているのです。
このような性質を、『量子力学』では『非局所性』と呼び、これは物理学者に広く知られています。
つまり、多くの確定しない可能性が世界にはこんな風に無数に転がっているのです。
ここで議論するのは、先ほど挙げた不確定性原理のうち『位置の確定』についてです。
これは、そっくり水月の要素となる『多くの確定しない可能性』の確定に置き換えられます。
その確定方法についてですが、主に2つあります。
ひとつは、確率論です。
最も多く起こる可能性のある事柄を『確率の高い』事柄といいますよね。
それは、『ある程度の不確定さを含んだ』確定事象です。
私のお得意のエントロピーでいうところの、『情報量の蓄積』ですね。
情報の散在した状態から、多くの情報を蓄積することによって、ひとつの定理を演繹的に生み出す。
ChaosからCosmosへ。原子の位置を確定させるには、絶対零度に程近似していくしか方法はありません。(熱力学の第三法則)
こんなミクロなところまで、確率論というのは反映されているのです。
つまりまとめると、ここでは確率と可能性は同値だと言える訳です。
もうひとつは、観測です。
ここから、マクロな『水月』の世界は、ミクロな『量子力学』の世界へとつながっていきます。
同時に存在する、矛盾した二つの可能性。
ミクロな粒子からその可能性を考える学問が『量子力学』なのです。
そこで用いられるのが、水月の落書きにもあった『シュレーディンガーの猫』です。
シュレーディンガーの猫 03/3/19
外から開けない限り中の見ることの出来ない箱。
その中に、一匹の猫と、いつ崩壊するか確定していない放射性原子核。
そして、その放射性原子核の崩壊を察知して毒ガスを噴射する装置。
それらを入れて箱にフタをし、しばらく経って中がどうなってるかを考えるのが、この実験なのです。
かなり可哀想な実験ですが、実際やるわけじゃないのであしからず。
はじめて見た方にはさっぱり見当もつかない実験ですが、この実験の要旨はこうです。
中にいる猫は、毒ガスが発生していれば死んでしまっているだろう。
もし発生していなければ無事だろう。
つまり、中を『観測』するまでは、その中身は不確定なままなのです。
死んだ可能性と生きている可能性が同時に存在したまま存在する箱の中の猫。
その猫の可能性は、箱を開けて初めて確定するのです。
量子力学の場合は、これを光子や電子などのミクロな粒子を用いて考えます。
この実験は、壁に開いた二つの離れた孔を用います。
そう、物理では有名な、『反射』『屈折』に続く光の方向を変える三番目の現象、『回折』の実験です。
光を壁に当て、壁の反対側にあるスクリーンに何が映るかを観察する。
もちろん、結果は波同様に『干渉縞』が出来ますね。
これは、孔を通った光が互いに干渉しあうことによってのみ発生する現象。
そして、これは『光子が二つの孔を同時に通ることによってのみ表れる』現象なのです。
ここからが、この実験の不思議なところなのです。
この干渉縞は、光子を順番に一つずつ放った時にも同様に現れるのです。
つまり、分割できない一個の光子が完全に同時に二つの穴を通った事を意味するのです。
言い換えれば、光子の存在位置に関する可能性は、同時に2つ存在してしまうことになります。
ここで、先程のように光の位置というものを『観測』によって定めてみます。
孔に、光子が孔を通ったことを観測する装置を置き、その時に出来る模様を観察します。
そうした場合、驚くべき結果が現れるのです。
簡単に言えば、光子は『干渉縞』を描かなくなります。
それは、両方ではなく片方の孔を観測した場合も同様になります。
片方の孔を観察することによって、もう片方の孔に光子が存在するか否かが決定し、結果『干渉縞』を描かなくなるのです。
この作用を、アインシュタインは『幽霊のような遠隔作用』と呼んでいたわけですね。
この現象を、先程の『シュレーディンガーの猫』風に言うとこうです。
外から中の見えない箱の中には、二匹の子猫と一つの放射性原子核。
その箱を、中が見えないようにしながら真ん中で仕切ります。
もちろん、子猫が両方の箱に一匹づつ入るように。
両方の小箱には、もちろん定番の毒ガス発生装置が取り付けられています。
その箱を、宇宙の正反対の方向へ飛ばすのです。
箱の中には猫の生きる環境が整っており、毒ガス以外では子猫が死なないようになっています。
つまり、先程の実験のように、箱の中には『生きた状態と死んだ状態』の重なり合った子猫がいます。
そうしてある程度時間が経ち原子核が崩壊した頃に、片方の箱の中の猫の生死を『観測』するのです。
もうお分かりでしょうか。
放射性原子核はどちらかにしか入ってませんから、死んでいるのはどちらかの子猫です。
片方の箱を開けることで、その箱の猫の生死はもちろんのこと、宇宙の正反対にいる猫の生死までが決まってしまうのです。
これが、上記の現象と同様の結果を得られる仮想実験の全てです。
この様は、ニールス・ボーアの提唱した『波束の収縮』という現象にあたります。
観測しない場合、光は波動の性質を持った『確率波』(ここでは『回折波』・『干渉縞』と同値)を描きます。
そして観測した場合、光はその波束を収縮し光は粒子の性質を持つ、つまりその位置を確定するのです。
つまり、観測の有無によって光は『波動』と『粒子』の両方の性質を持ち得るのです。
このことは、ボーアの出身地にちなんで『コペンハーゲン解釈』と呼ばれています。
これは、位置を確定させることで運動量が不確定になる、先ほどの『不確定性原理』と類似していますね。
水月でいえば、多くの可能性は観測によってひとつに決まるということです。
水月における観測と、観測者『那波』 03/1/25
さて、長々と小難しい物理について知識を紐解いてみたわけですが……
この話を踏まえて、再度水月についてまとめてみましょう。
世界には、多くの確定しない可能性が同時に存在している。
その可能性は、観測によって初めて確認される。
これが、水月にも応用できる『位置の確定』に関する事柄なのです。
このことは、雪シナリオ最終日での庄一の台詞にも表れています。
『物事は、観測されてはじめて知覚される』
裏を返せば、観測できないものは知覚出来ないということです。
その知覚されているものが異なることは、世界の違いを意味します。
これが、本編七夕の場面で出てきた台詞の意味なのです。
常識とは、一般に多くの人が知覚している事柄。
非常識とは、幽霊や幻覚といった、特有の人のみが知覚している事柄なのです。
つまり、雪や那波といった存在が、透矢の中では現実であり、他の人にとっては非現実な時もある。そういうことを言っているのです。
それは、アリスとマリアにとっての母の認識の違いと同じ事です。
矛盾したふたつの可能性。
それを観測するか否か。またどう知覚したかによって、事象はふたつの性質を同時に持つのです。
いわゆる、これが『並立世界』の一般解釈というわけです。
さて、その観測は水月の世界ではいつ行われたのでしょうか?
例えば、那波シナリオを例に取って考えて見ましょう。
私の解釈をこうです。
『那波について観測されたのは、最後の日である』
透矢が『目覚めてから最後の日まで』というプロセスを脱し得たのは、最後の日に他なりません。
最後の日をどのように過ごすかによって、後の可能性が確定するのです。
最後の日を終えたとき、自分の日常にいるのは『どちらの那波』なのかが。
その時点では、未来は確定していないのです。
このようにして脱した夢の無限邂逅。
そこにあったのは、『夢を前提とした』普通の日常だったのです。
『水月』という夢から連続した『みずかべ』の世界。
全ての夢は、現実へと無限に連続した事象なのです。
ここで、先程議論しなかった『運動量の不確定』が起用できます。
運動量は言い換えれば、未来の確率、可能性なのです。
ある現実に立ったとき、その先には無限の可能性が広がっています。
延々と観測していくことで、未来は繰り返し確定されていくのです。
これは、現実でも夢の中でも同じ事です。
そして、この世界を観測したのは那波です。
これは、『みずかべ』の世界での話ですけど。
彼女は、夢の中で『最後の日の続き』を知ったのです。
夢という過去。彼女がいつそれを知ったのかは解りません。
でも、これこそが水月の世界に存在する『運動量は確定したが位置は確定しない』状況なのです。
これが出来たのは、唯一『みずかべ』の那波だけなのです。
それは、『水月』の世界では存在し得なかった可能性。
別方向のベクトル 03/1/25
さて、ここから本当に私の見解になっていきます。
ここまで那波と雪の共通点である『不確定性』について話してきましたが……
今度は二人の相違点について考察していきます。
どちらのシナリオも、多くの不確定な未来からひとつを決定していくという点で共通します。
ここで問題とするのは、雪の可能性の決定する方向性です。
水月の那波は、多くの可能性から『夢から抜け出す』可能性を選んだ話です。
そして、水月の雪は、多くの可能性から『夢に留まる』可能性を選んだ話です。
雪エンド1『しずく』では、雪は『魔法が現実になったもの』として存在しつづけますね。
つまり、雪は『夢を現実にする』。那波は『夢から抜け出す』。その方向は逆を向いているのです。
言い換えれば、雪は『水月』のエンド。那波は『みずかべ』のエンドだと言えます。
先程の常識、非常識という観点で捉えると、前者が非常識・後者が常識になりますか。
その場合、雪さんを選ぶことはシナリオ通り『マヨイガ』に迷うことを意味するのかもしれません。
それでも、水月とみずかべ、どちらの世界でも存在する雪さんは
やはり、真に透矢に欠かせない存在だといえるのかもしれません。
Parallel World 03/1/25
なんだかんだ言って、水月は『夢オチ』だったわけです。
ここで、もうひとつの『みずかべでの解釈』をしてみます。
それは、絵本の『水月』の話です。
絵本『水月』に書かれていたのは、前の解釈どおり『世界のもうひとつの可能性』です。
これは、『みずかべ』の謳い文句にもなってますよね。
那波はこの本を読み、その可能性を夢見たのです。
その夢は透矢にリンクし、そして『水月』の世界が生まれた。
つまり、水月の話は『絵本の中の可能性』なのです。
そして、もうひとつの水月の可能性として『すいげつ』があります。
これは、水月での香坂姉妹のシナリオにあたります。
では、全く触れていなかった香坂姉妹のシナリオについて話しておきましょう。
皆さんは、香坂姉妹のシナリオを終わらせて、不思議に思ったことはありませんか?
仲良くなった双子と同棲生活を送りながら、ベタベタと毎日を過ごす透矢。
そういえば、狐の情報を提供してくださった雪さんは何処に行っちゃったんでしょうか?
ここで問題になるのは、雪さんの存在理由です。
『水月』での雪さんは、透矢の頭を撫でてくれる人、として存在しています。
しかし、そこに透矢を必要としてくれる『双子』が現れました。
つまり、頭を撫でて貰っていた透矢は、他人を撫でてあげる存在となったのです。
これは、双子の母のマリアへの言葉に似ていないでしょうか。
透矢が強くなったことで、雪の存在理由が無くなってしまったのです。
それによって、虚構の存在だった雪さんはいなくなってしまったのです。
絵本の世界の二元論 03/1/25
ここでも、量子力学風の説明をしてみましょう。
それは、『水月』の可能性と『すいげつ』の可能性による二元論です。
ここでの『水月』と『すいげつ』は、絵本の中の話を意味します。
この二つの世界は、ふたつの孔から出た波紋が複雑な干渉稿を描くように、互いに干渉しあうのです。
これは、花梨・和泉シナリオで那波の最後の夢に出てきた二つの波紋の話に類似してます。
特に大きな要素を占める二つの可能性の上を、水月のキャラクターたちは漂っているのです。
その二つの波紋は、シナリオによって違ってきますが……
その波紋の中で最も大きいのが、『水月』と『すいげつ』の波紋なのです。
『水月』の世界に存在するのは、雪さんや友人達です。
『すいげつ』の世界に存在するのは、アリスとマリアです。
記憶を失った透矢は、二つの世界の干渉しあって出来る複雑な波紋の上を最初漂っています。
その上を、他人に干渉されながらゆらゆらと漂っている。
そこに大きな力、ここで言うと透矢の意思、が加わることで、どちらの世界かに流れていくのです。
この場合、『すいげつ』の世界では雪さんは否定されてしまうので、その結果雪さんは消えてしまったというのです。
もちろん、実際の世界にはもっと複数の可能性があります。
那波の場合、違う形で両方の世界の世界に存在しています。
雪の場合も同様に、違う形で両方の世界に存在することが出来るのです。
そして、双子の可能性も同様に多くの可能性があるのです。
普通の双子。魔女の双子。望まれた形は世界の何処かに存在し得るのです。
それは、アリスが髪を切る可能性だったりもするのです。
その辺りが、『水月』や『すいげつ』といった絵本上の話と、『みずかべ』といった現実世界との違いなのではないでしょうか。
ただ、はっきりといえないのは、『みずかべ』の世界が現実でない可能性も同様に存在しているからです。
織り姫星とアルシマクアルアザル 03/1/25
ここで、水月のお話に関連の深い天文学風の説明をしてみましょう。
先ほどの二元論の話を、そっくりそのまま天体に置き換えてみるのです。
つまり、二つの世界の干渉しあって出来る複雑な波紋を、天の川とします。
そして、その天の川を挟んで水月側が彦星、すいげつ側が織り姫星と考えるのです。
こうすれば、なかなか面白い考え方ができます。
水月は、天の川を年に一度渡る逢瀬の話。つまり七夕の話です。
那波はこの時、夢の中あるいは夢の中の夢の中で、透矢との逢瀬を果たすのです。
この場合、那波は『すいげつ』の側から『水月』の側へ渡るのです。
この時、『みずかべ』の那波は『水月』のナナミとなり、天の川で透矢と出会うのです。
よって那波は『すいげつ』側の可能性となってしまい、透矢は『水月』側の可能性となってしまいます。
ここでの那波は『みずかべ』で出る那波ですから、間違いはありませんね。
冬の星座となってしまい少しあれですが、彦星側に『うさぎ座』というものがあったりします。
これを雪さんとすれば、透矢と雪さんは同じ側にいる星となりますね。
そして、双子は乙女座です。
あえてふたご座にはしませんでしたが、ふたご座でも乙女座同様織り姫星の側の星座です。
ここで、まとめてみれば、
透矢はわし座のアルタイル。那波は琴座のベガ。双子は乙女座のスピカに例えられます。
追加すれば、雪さんはうさぎ座です。(この星座に有名な一等星はありませんけど…)
もし透矢が天の川を渡り切ってしまったならば、そこに雪さんはいなくなってしまうのです。
星座が無数にあるように、その存在の可能性も無数。
ここで話しているのはやはり『すいげつ』の話で、『みずかべ』の現実の話ではありません。
現に、幼馴染の雪さんは『みずかべ』の世界でも透矢の側にいますから。
無数の可能性の中で変わらないのは、双子の絆の方だと思います。
ふたりぼっちで暮らしてきた、強い絆で結ばれてきた二人。
だけど、その可能性に少しの変化を与えることは出来るのです。
教会の双子は、消して離れることのない連星でありつつも、無防備なままのアルシマクアルアザルなのですから。
Indistinguishable "Mayoiga" 03/1/25
最後に、水月の主だったテーマである民俗学風の説明をしてみましょう。
ここで用いるキーワードは、お馴染みの言葉『マヨイガ』です。
このお話は、本編雪シナリオにあった話の換言説明、またさらに深くした話となります。
『マヨイガ』の本編中の定義はこうでした。
『普通の人が立ち入ることの出来ない場所』
つまりは、ここではないどこか、異世界にあたるものです。
水月を浅く理解した場合、それはあの廃村を意味し、洞窟の奥の世界を意味します。
マヨイガをそのような『場所』と定義する場合、その場所には入り口なるものが必ず存在します。
現世と異世界を結ぶ通路。
それには、日本神道でいう『鳥居』が当たります。
宮代神社の裏にある鳥居は、水月の世界における『マヨイガ』の入り口に当たるのです。
透矢と雪が廃村から帰ってきた時、ふたりが戻ってきたところはあの『鳥居』でした。
さらに水月を深く理解した場合、それは認識の違いを意味します。
前章『水月における観測と、観測者『那波』』の観点で言うと、現実は常識、マヨイガは非常識に当たります。
その場合、入り口は明確に定義することは出来ません。
このことから、水月の世界の説明を展開していきます。
ここでは、前章『別方向のベクトル』で挙げた事柄がそのまま適用出来ます。
つまり、那波シナリオは現実に、雪シナリオはマヨイガに向いているという話です。
大きく二つの世界に分ければ、現実の『みずかべ』と、マヨイガの『水月・すいげつ』に分けられます。
これは、先程の二つの二元論とは異なった形ですね。
現実に重なった形で存在する、多くの『マヨイガ』という名の並列世界。
そこに存在するのは、自己の世界を『常識』によって現実たらしめ、他の世界を『常識外』として非現実たらしめるといった違いのみです。
言い換えれば、知覚によって秩序が整っている世界のみを、人は『現実』とみなしているだけであるということです。
しかし、実際現実は常に不確定さ、Chaosを含んだ状態で、未来または過去に開いています。
これはまた、いつか『トンネル効果』を説明する時に合わせて説明しますので、後々ということで。
つまり、明確な秩序を持った現実世界は存在せず、常に『マヨイガ』としての性質を同時に持っているのです。
常識と非常識の境はあまりに不確定なゆえ、実際どの世界が現実かは判断がつかないのが現実です。
いったん秩序が大きく崩れると、そこには知覚による世界形成の大きな変遷が起こってしまいます。
今まであった常識が非常識になり、今まであった非常識が常識になる。
それが、雪さんがいなくなった理由なのだと思います。
『水月』の世界の誕生 03/3/19
ところで、ここでお話は大きく変わりますが……
皆さんは、シナリオ中に語られたある一言を覚えているでしょうか?
『壁にぶつかった時、そのまま壁を通り抜けてしまう可能性が現実に存在する』
これは、双子シナリオ中に一度アリスが言った事です。
知っている方も多いでしょうが、これも量子力学の大きな要素の一つとなっています。
この現象は、一般に『トンネル効果』と呼ばれています。
トンネル効果とは、江崎玲於奈氏がノーベル賞を取る切っ掛けとなった理論です。
極小さな粒子が、極小さな確率で大きなエネルギーの壁を通り抜けてしまう現象。
不確定な状態で絶えず揺らいでいた最初の宇宙は、体積が無くそして高い真空のエネルギーを持っていました。
結果トンネル効果が起こり、宇宙が『ビッグバン』によって誕生したのです。
この後、インフレーションによって宇宙はさらに大きく膨張していきました。
低い温度下で二層の真空のエネルギー差が熱となり放出され、その結果体積が膨張する、という理論です。
現在の宇宙は、星間の距離を観察すればお解りのように、膨張を続けているのです。
言い換えれば、可能性の揺らぎが世界を生むということになります。
そうやって生まれた世界は、その可能性を大きく膨らませていくのです。
これは、水月の世界のみならず現実の世界にも言える理論だと思います。
では、それを逆行する方向……水月でいうところの『夢』についてはどうでしょうか。
量子力学と並んだ理論『相対性理論』を用いて、水月の世界を遡ってみましょう。
量子の国のアリス 03/3/19
アルバート・アインシュタインが主張した最も基礎的な事柄は、次のようなものである。
『全ての者は、自分が静止していると主張する権利を有する』
一見意味不明な言葉ですが、言い換えれば『全ての運動は相対的なものである』ということになります。
等速度で反対側に0.25c(約7.5万km/s)で走る物体を想定します。
この時、片方の物体にとってもう片方は0.50cで走っているように見える。つまりはそういう理論なのです。
では、その二つの物体の速度を0.75cにしたらどうなるのでしょうか?
やはり、その場合は片方の物体にとって1.5cで走る物体に見えるのでしょうか?
結果は、0.96cになります。
ここで行われた計算方法を『ローレンツ変換』と言います。
これを用いた場合、物体の相対的な速度はc(約30万km/s)を超えることはありません。
もちろん、二つの物質の速度が光速cを超えることが無ければの話ですが。
では、どうしてこのような計算が成されることになったのでしょうか?
そこに、今回議論される『水月の世界を遡る』手掛かりが隠されています。
ここで、先程の理論の上に『時空』という統一体を導入してみましょう。
縦x2横y2奥行きz2といった空間に、さらに時間−t2を導入するということです。
中学校で習った『三平方の定理』と似ていますね。
この時、時間をマイナスにしたところに重要な意味があるのです。
この時空での距離は『四元距離』と呼ばれ、対象の運動とは関係なく不変となるように定められています。
空間と時間を異符号にすることで互いの変化を相殺し合うことによって、四元距離が一定になるようにしているのです。
そして、この概念こそが先程の計算の正体なのです。
簡潔に言ってしまえば、速度を上げることによって時間の流れが遅くなるのです。
この変化は速度が遅い時は目立ちませんが、光速cに近付くにつれてそれは顕著になります。
これによって、物体の相対的な速度がc(約30万km/s)を超えることはないのです。
この概念はただの概念に留まらず、現実に起こっているということを頭に入れて置いて下さい。
さて、ようやくここからが本題となるわけですが……
察しの良い人は、『水月の世界を遡る』という事がどういう事か解ったでしょう。
このような『特殊相対性理論』によれば、物質は光速に辿り着くことは出来ません。
では、もし物質が光速に達した時、何が起こるのでしょうか?
先程までの説明に則れば、時間が流れなくなります。
さらに、ローレンツ収縮により全ての物質間の距離がゼロになる……これこそがテレポーテーションの正体ですね。
そして、光速を越えた時……物質は過去に遡る事が出来るのです。
水月の世界には、このような要素が含まれています。
それは、上で挙げた『夢の無限邂逅』の事です。
那波シナリオでは、最後の日を境に『夢』と『現実』が区別されます。
ただそれらは連続しているので、夢か現かはその場その場の観測によって異なります。
その時点での現実は、後の夢と成り得るのです。
最後の日、その可能性が確定した時、その反発力によって以前の可能性が確定するのです。
同時に、以前の他の可能性が否定されることにもなるのです。
これは、上に挙げた『シュレーディンガーの子猫たち』と類似します。
光子に対するタキオンの存在性。それは過去に戻ってその可能性を決定するかのように振舞います。
夢と現実の区別というプロセスは、このような要素を含んでいるのです。
超えられない壁の向こう 03/3/19
『トンネル効果』の話の最後に、世界の始まりと終わりについてお話します。
先程の『時空』の概念を導入した場合、時間の流れはある種の球体に置き換えられます。
それは、地球のような物を想像していただけると理解しやすいと思います。
宇宙は段々膨張しており、いつかは収縮していくと言われています。
その様をモデルにしたものが、この球体なのです。
北から南への方向を、過去から未来への時間の流れに対応させます。
その時、世界の始まりは北極、世界の終わりは南極に対応します。
だんだん宇宙は膨張しやがて収縮しますから、そのモデルは球体となるわけです。
これによると、北極から見た全方角が南であるように、世界の始まりの地点から見た全方角は未来となるのです。
過去の無い時点……これこそが世界の始まりなのです。
過去に戻ろうとしても戻ることが出来ずまごついた状態、こうして宇宙は不確定な状態のまま揺らぎ続けていたのです。
このような地点を、物理学的には『特異点』と呼びます。
もちろん逆も言えるので、世界の終わりの地点から見た全方角は過去なのです。
最後に、さらにビッグバン以前の世界に戻ってみましょう。
先程の説明のように、光速を越えた物質は過去に溯る事が出来ます。
この状態は、空間と時間の符合が逆転したという事を意味します。
そして、時間が最初の地点・ゼロを超えた時……時間は『虚数』になります。
それは、時間−t2の平方根がtiであることからも説明がつきます。
スティーブン・ホーキングの『虚時間』は、現在の物理学では割と当たり前の物として受け入れられています。
水月から離れた理論紹介でしたが、水月の世界を測る尺度として覚えておいても良いと思います。
その他。
作品中でアリスが『防空壕の鍵をすりかえる』というトリックを使ってますよね。
アリスはなんであんな面倒なトリックをわざわざ金をかけてまでやったんでしょうか。
そもそもアリスがすりかえたのは、ダイヤル式の簡易な鍵でした。
トリックはこうです。
○牧野健司が洞窟に入っている間に、買っておいた同じタイプの鍵とすりかえる。
○ダイヤル式の場合閉めるのに番号は気にしないので、そのまますりかえた鍵で扉をしめる。
○すりかえた鍵の番号は知っているので、洞窟に入ることが出来る。
穴だらけだと思いませんか。このトリック。
そもそも、牧野健司がいない間に鍵の番号を覚えてしまえばいいんです。
ダイヤル式の鍵は通常、開いている時は番号が固定されるようになってますから。
○仮定1・ダイヤルを戻して洞窟に入った場合。
まずありえませんね。こうしたら番号を再度合わせずにどうやって鍵をかけるんですか。
それに、鎖に鍵をかけてしまった状態だったら鍵をすりかえるなんて無理ですからね。
つまり、『鍵は開いた状態である』というのが前提になります。
○仮定2・番号が開いた状態で固定されない場合。
実際にはこんな場合はほとんどありえませんが、考えておきます。
この場合も、ダイヤル式の鍵なら番号を予測することは容易です。
基本的にダイヤル式の鍵は、開けたら番号を動かすことはありませんから、周辺の番号がその鍵の番号であることは明確です。
その番号を覚えておいて、牧野健司が帰ってからゆっくりと周辺の番号を調べていけば良いだけですから。
他にも、例えば自転車の鍵のようなタイプだったとしたら、鍵穴を見ればすぐにずれたダイヤル合わせられますよね。
○仮定3・仮定2が成り立った状態で、鍵を開けたままダイヤルだけをずらしていた場合。
これは、アリス本人が言ったセリフに矛盾します。
『用意周到な人なら、鍵は中に持って入るだろう』
つまり、牧野健司は『用意周到じゃない』人間なので、ダイヤルを戻したりはしないのです。
大体、ダイヤルだけ戻すくらいなら、鎖に鍵をかけておきますよね。
以上のことから、アリスのトリックの穴が証明されました。
なんか、数学の証明っぽくて嫌ですね。背理法ですか?
皆さん、同様のトリックをしたいときは、手っ取り早く番号を覚えてしまいましょう。
計画されてた?散髪後のアリスちん 03/1/3
これは気づいていない人も多いのではないでしょうか。
おそらく、水月発売段階ですでに散髪後のアリスちんは存在してました。
次の事がその証明です。
水月の立絵はSUIGETSUフォルダ内の『SG03.MRG』というファイル内に保存されています。
例えば、アリスの立絵のうち水月本編アリスエンドで出た、髪を下ろしたCGは『CSE14_**.mcg』という名前で保存されています。
CSEはアリス・立絵、CLEはアップのアリス・立絵であり、**はそこに入る数字によって表情や朝昼夜などのパターンが分けられています。
同様に、みずかべの立絵もMIZUKABEフォルダ内の『SG03.MRG』内に保存されています。
それで、問題のアリスの散髪後の立絵CGはといえば……
『CSE13_**.mcg』という名前で保存されているのです。本編CGより番号が若い。
基本的にCGは使いまわすので、水月とみずかべ内の同じ名前のCGは全て同じCGです。
もちろん、水月の『SG03.MRG』内には『CSE13_**.mcg』は存在しません。
よって、水月が発売する前の段階から、アリスの散髪後CGは存在していたと予想されるわけです。
那波や花梨のCGも所々番号が飛んでますから、もしかしたら未公開CGがあるのかも知れませんよー。
これって誰の趣味? 03/1/3
そういえば、皆さん、水月をプレイしながら思いませんでしたか?
やけにおもらしが多かったですよね。好きな人にはたまらないけど、嫌いな人にはたまったもんじゃない。
そういうわけで集計してみました。
○水月
那波:2/3 花梨:1/3 和泉:1/2 雪:1/2
アリス:1/1 マリア:0/1 双子:0/2 鈴蘭:1/1
○みずかべ
那波:2/2 双子:1/2
「おもらし回数/えちぃ回数」です。恐ろしい割合ですねー。
那波なんてほとんどですよ。外でのハプニング以外全てです。
これは、元々トノイケダイスケ氏の趣味のようです。
それを受けて、☆画野朗氏の趣味にもなっちゃったようです。末が怖い……。